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飯田稔 理事長と語る

世界で最も長生きの国になったが、
「長命」イコール「長寿」社会になっているのか。

日本は世界一の長寿国になりました。その中で医学が果たした役割は大きいですね。

飯 田
長い日本人の歴史の中でいえば、ついこの間まで『人生わずか50年』でした。それが30年以上も伸びたのですから、これは驚異的なことです。
まず、ありがたいことに日本が平和だった。そして食生活がよくなり、環境が整い、医学が発達した、健康に対する関心が高まったなど、いろんな要素があったおかげですね。
ただ、長命イコール長寿かというと、これが難しい。いくら長命であっても、幸せな人生でなければ、何の意味もない。幸せな人生をつくるキーワードの一つが「心身の健康」です。私たちの仕事は、一言でいえば、長命イコール長寿にするお手伝いといえるかもしれません。

病気の様子もかわりましたね。

飯 田
昔は細菌やウイルスなど外から病気の原因が入ってくるものが一般的でしたが、この頃では、自分の中から病気になるものが多いのです。ガン、脳疾患、心疾患、神経症など、みんなそうですね。生活習慣などに由来するものが圧倒的に多いのです。
また心臓、角膜、腎臓、肝臓などの臓器移植、人工臓器、さらに遺伝子治療など、医学・科学の世界はすさまじい勢いで進んでいます。
脳死やクローンのことなども含めて、自然の摂理を超えていいのか、それは神の領域ではないのかなど、倫理的な問題も含め議論される時代となりましたが、我々としては患者様の病気が治る手段があるのなら、機器類の導入、技術の研鑽も含めて、積極的に進歩についていかなければならないと思っています。それが命を預かっている我々の使命だと思いますから。

これからの医学は病気を治すだけでなく、
病気にならない「未病」「予防」の地平をめざす。

病気にならないようにすることも病院の役割でしょうか。

飯 田
人間は昔から、健康・長寿・美しさを追及してきました。長く生きたい、健康に生きたい、幸せに生きたい、こういうすばらしい人生をおくっていただくために、病気を直すだけでなく、病気にならないように手助けしてさしあげたいですね。
また、病院の役割として、将来的には精神療法なども取り入れた治療を、と思っていますが、そのためには我々自身ももっと勉強していかなくてはなりません。
たとえば現在、体内を酸化させるといわれ、大きな問題になっている活性酸素ですが…。
活性酸素について簡単にいいますと、人は酸素をとらないと生きてゆけませんが、呼吸によって取り込まれた酸素の一部は活性酸素となり、DNAや酵素などを傷つけたり、細胞にダメージを与えて老化を促進します。人体の細胞膜などを形成している脂質がこの活性酸素によって酸化されると、過酸化脂質になり、血圧を高くしたり、脳梗塞を起こしたり、さまざまのワルサをするので万病の元ともいわれているのです。
病気にならないためには、たとえばこういった活性酸素への対処なども必要です。
しかし我々自身も習ってこなかった視点なのですね。だから、とにかく勉強が大切なのです。

民間病院として未病医学や予防医学、最先端の医療技術を提供されるのは大変ですね。

飯 田
とにかく医学はどんどん前へ行っていて、じっとしてると取り残されてしまいます。患者様にも最高の医療をご提供できない。
幸い東和会は、私の母校大阪医科大学と至近距離にあり、そちらと一緒に、絶えず新しい分野を勉強しています。スタッフとしても、また学問的にも医科大学と太いパイプを持っているということは、最新・高度な医療を提供するのに大きな力になっていますね。
さらに私どもの病院では、毎月1回、自主的な研究発表会をしているんですよ。
医師はもちろんですが、看護婦さん、各科などで、臨床的な研究を発表しあいます。これが刺激になっているようですね。働く人にしても、ラクだからいいというものじゃない。自分が学べて、向上しないと、楽しくありませんからね。

人の喜びが自分の喜びにはねかえってくる、
そんな感覚がないと、この仕事をする価値がない。

働く環境については、どのようにお考えですか?

飯 田
基本的には、働く人が「幸せで快適な生活ができる」ために働くわけですが…。我々のところで働くというのは、単に労働すればいいというものではありません。ボランティア的な心というか、「人のために」ということが考えられる人でなくてはだめだと思います。自分の生き方はどんなものか、自分のいきがいとは何か。精神的な満足を得たい人でないと…。
人に尽くすことが楽しかったり、その結果がまた自分に返ってくるのがうれしいという感覚の人でないと、医療に従事はできないのではないでしょうか。遊びたいから、日曜日や正月に働くのはイヤだといったら、誰が患者様の面倒を見るのですか?病気に休みはないのですから。

東和会のポリシーとして大切にしていらっしゃるのは何ですか?

飯 田
「愛」と「和」ですね。人を愛し自分を愛し、そして人と人との「和」を大切にしています。 当院では患者様に「よくしてもらってよかった」といっていただいていますが、これはスタッフが、相手のことを自分のことのように考えて接しているからではないかと自負しています。誰でも自分を愛していますが、自分を愛するように相手も愛する。本当の気持ちって伝わるものなんですよ。
スタッフが「和」を持って働くだけでなく、もう一つ、患者様も同じ仲間、家族の一員と常に思っていること。ちょっと大げさにいえば「人類愛」かな。スタッフの数は多いけれど、この信念を理解してもらっていると思います。同じ信念、同じ基本理念がないと、皆が同じ方向に向かって動けない。だから、団結していると思いますよ。
スタッフには生きててよかったなという仕事場を提供すること。ここで働いてよかったなと思ってもらえる職場作りを心がけています。金銭的なことも含めてね。

精神的な満足とともに金銭的なことも重要ですね。

飯 田
高度な医療の提供には、経営の果たす役割なくしてはありえません。経済的な力がなければ、治療に役立つ機器類も導入できないし、次代への展開も考えられない。
私も含め、皆で力を合わせていく訳ですが、そうしてできあがったものは、皆で分かち合っています。
たとえば福利厚生に力を入れたり、看護学生を応援したり…。
福利厚生としては、年に一回の社員旅行や、永年勤続者の海外旅行、滋賀県にはオールシーズン楽しめる保養所を作って、自由に使ってもらうなどしています。
東和会のドクターは、働きやすいと評価いただき殆どが開設以来、ずっと働いてくれていますが、成り立ちの頃から、スキーに行ったり、皆でワッーと遊ぶのも特長ですね(笑)。
働く環境を快適に整えると同時に、経営をスタッフの生活に直結させて、すこしでも豊かな人生をおくってもらえるよう役に立ちたいと常に願っています。

人を救うのには医術のテクニックだけでなく
心の在り方を追求する「精神医学」も重要になる。

これからの医療についてお話いただけますか。

飯 田
医者も職人ですから、病気を前にすると、手術をしてでも何としてでも直したいと思います。でも、たとえば末期ガンなどでは、手術をしたり、抗ガン剤を投与することによって、かえって死期を早めることもありうる。今まで局部的な対処をしてきた西洋医学は、反省期にきていると思うんですよ。患者様本位の医療にならなければいけない。たとえば手術や薬で延命できないのなら、痛みや苦しみを取り去って、幸せに人生を全うしていただきたい…。
そういう時に精神的治療が必要になります。先にもいいましたが、これからは、そういう治療も考えていきたいですね。